小さな部屋の窓を開けると、
春の心地よい風がふわっと入ってきた。
その日差しは、初夏の顔も覗かせている。
気持ちの良い休日の午後、
ここから飛び出して
旅する自分を想像してみる。
この空が繋がっている世界には、
どんな素敵な出会いがあるだろう。
肌を焦す太陽、乾いた風、鳥のさえずり、
人々の会話と雑踏、食べ物の匂い。
見るものすべてにトキメいて
異国を訪れた高揚感にきっと私は、
心が踊り唄い出す。
「世界はこんなにもうつくしい!」
ふと我に返って、視界は元の小さな部屋。
いつか旅先で着ようと決めたワンピースと帽子は、
まだ出番なく隅のラックに掛かったままだ。
とりあえず、
それらをスーツケースに入れてみよう。
予定は自分で作ればいい。
近頃は仕事もよくがんばったし、ご褒美としての
言い訳は十分。
お気に入りのスキンケアも持っていこう。
肌の艶と良い香りを旅のお供に。
「自分の機嫌は自分で取る」と、
いつか誰かが言っていた。
うん、そうだ。
自分のための、自分らしい旅をしよう。
そんなことを考える休日の午後、
日差しもますます眩しかった。
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